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セパタクロー
セパタクロー、空中の格闘技

自分流のスタイルで、心からやりたいこと(=趣味)をとことんやり続けている人々は、どのようなスタイルでその趣味を続け、楽しみや喜びを得ているのか?今回は、徐々に知名度を上げてきたスポーツ「セパタクロー」のアタッカーとして活躍する、堀江飛鳥さんのスタイルをご紹介します。聞きなれない語感のスポーツですが、簡単にいうと、「足を使うバレーボール」。しかし、ムエタイやキックボクシングの要素があり、実際の試合を見ると、まさにネット越しの格闘技。荒々しさを感じさせるセパタクローの魅力を聞きました。

注目されつつある、新しいスポーツ

セパタクローを簡単に説明すると、ネットをはさんで3対3で行われる、「足を使うバレーボール」。コートの広さとネットの高さは、バドミントンとほぼ同じだ。

1セットが21点、2セット先取で勝敗が決定する。ポジションは、サーバー、トサー、アタッカーで、ポジションの交代はない。

足でボールを運んで打ち合い、ブロックやレシーブ、ボールを受ける場合は、足のみならず、背中や額を使うことも。手を使った場合、手がボールに触れた場合は、サッカーと同様、ハンドになる。

見どころは、足で巧みに行われるボールさばきと、高く上がる足がボールを打ち込むアタックの激しさ。そして、手を使わないといえど、全身が躍動する格闘技のような迫力だ。

この日は全日本セパタクロー選手権大会が開催されており、堀江さんは試合直前の、大事な時間を割いてくれた。長身で引き締まった体、集中力をピークに合わせて高めはじめている感じ。ずっとスポーツをやり続けている人の雰囲気だ。実際、中高とずっとサッカーをしていて、大学からセパタクローを始め、もう10年になるという。

−サッカーではなく、セパタクローを選択した理由というのは?

「大学でもサッカーをやろうか迷ったのですが、当時、セパタクローの競技人口はとても少なかったんです。それで、日本代表を目指せるといううたい文句で部員を募集していて、やってみようかと思いました」

−サッカーと比べて、どうですか?

「そうですね、チームの人数が3人と少ないので、チーム力が問われます。それに、3人という人数は、個人の責任も重いし、チームの和と、両方が大事です。そして、体の動きが独特なので、考えながら動くことが多くなりました。」

−ポジションは固定ですが、アタッカーの堀江さんは、どんな練習を?

「一人のときは、ボールタッチをひたすらしていますね。セパタクローは、シューズのインサイドが平らになっていて足のインサイドでボールをコントロールします。ちょっとした加減でボールのコースが全然違ってしまうので、細かい練習を行います。」

「練習方法は、自分が考えたことがはまって上手くいけば、それが一番早く上達しますよね。いくら教えてもらっても、自分で理解して動けないと、意味がないですから。」

サッカーなど、すでに広く行われているスポーツと違って、効果的な練習方法が確立されているわけではない。だから、「始まったばかりのスポーツ」の変化とともに、理想的な練習を手探りで探し当てることも喜びであり、のめり込む理由の一つなのだろう。

「ヘディングの練習も大事です。ボールはプラスチックで出来ていて、真新しい物は硬いんです。練習で、ヘディングが連続で50回できたら次のメニュー、なんてやるんですけど、47回で落としたら、また最初から。そんなことを繰り返していると、額から血をにじませている人はよくいましたね」

確かに、試合の様子を見ていると、ボールが足や床に当たるたびに、硬い音がする。

−セパタクローは外国が発祥ですよね。

「そうです。タイとマレーシアですね。セパがマレー語で『蹴る』、タクローがタイ語で『ボール』。タイのチームは、めちゃくちゃ強いんですよ。」

−動きがムエタイやキックボクシングに似ていますよね。外国のチームと試合をした経験は?

「実際、セパタクローは『空中の格闘技』と言われます。大学生のとき、日本代表に入っていて、海外に遠征をしたことがありますよ。韓国と試合をしたのですが、レベルが高くて、すごく強かったです。スポーツへのお金をかけ方も違いますし、日本はまだまだだと思いましたね」

一通り話を聞かせてもらった後、堀江さんの試合の時間が近づき、アップのためにインタビューは一旦終了となった。対戦相手は、この大会の優勝候補。日本で最高レベルの技術を持った、日本代表の選手がそろっている。

ボールを使った格闘技

両チームがコートに整列し、挨拶をして試合がスタート。堀江さんのチームは長身のメンバーが揃い、コンパクトなコートがより狭く見える。試合が始まった途端、大きな声がコートの双方から飛び交った。チームメイト同士の声の掛け合い、審判へのアピール、そして、対戦相手を威嚇するかのような大声。声を出すことによって、表情も、試合のテンションも高揚していく。

サーバーがボールを上げ、コートの向こうの対戦相手が受ける。トサーがトスを上げると、ぴったりのタイミングで足を蹴り上げたアタッカーが、空中で回転するようにしてアタックを打ちこむ。その鋭さや激しさは、ネットがなければ、本当にボールを使った格闘技だ。足をハサミのように開いた形でボールを打ちこむ「シザース・スパイク」、オーバーヘッドアタックのような動きの「ローリング・アタック」、フェイントもかける。

アタック、ブロックのときは、ネットをはさんで対戦相手と衝突しそうになることも。特に男子のジャンプは高く、頭突きを狙っているような迫力の表情と、高く蹴り上げて交差して見える脚が、空中で静止するようだ。蹴り上げた足が相手に当たることや、足を自分の頭よりも高く上げたままバランスを崩し、体ごと床に落下することもある。だんだんと格闘技に見えてくるが、ルールも流れもある、頭も使う、れっきとした球技だと思い直す。


コンパクトなコートでは、チームメイトの表情も相手チームの表情、疲労の度合い、目線の動きさえ分かってしまう。ただでさえ難しい、足でのボール運びに神経を研ぎ澄まし、緊張感をみなぎらせ、試合の流れを見定める。

声を張り、テンションを上げ、流れを冷静に読み、技術と集中力を最高に高めた状態で、堀江さんのチームはジリジリと対戦相手を追い上げた。2セット目の中盤、タイムアウトをとったところから試合の流れがぐっと変わり、1セット目の負けを覆して2セット目は勝利。試合としては引き分けになったが、試合の後半になるにつれて観客は引き込まれ、身を乗り出したり声援を送ったり、見事なショットに拍手を送っていた。



上を目指す

試合後、汗も引かないまま、インタビューのために戻ってきてくれた堀江さんは、試合前とも試合中とも違う、晴れやかな表情をしていた。試合を終えて一言、を聞いてみると、

「試合としては引き分けだったけど、相手チームにここまでの試合ができてよかったです。試合の流れが良くなくて、流れを変えるためと、自分たちのやるべきことの確認のために、タイムアウトを取りました」

とのこと。タイムアウトも作戦だったようだ。試合中は、インタビューのときの穏やかな様子と打って変わったテンションの高さだったが、それも作戦だっただろうか。あの高揚感の中、勝ちに行くための冷静な視点を維持していたことにも驚く。次の試合へ勢いづく、幸先のいい結果となった。


セパタクローを始めて、仕事でも、前後や効率をよく考えて行動するようになったという堀江さん。練習の細かさや、やり方を自分で考えることの影響は大きい。セパタクローをやっていると言えば、周囲にもインパクトがある。最近は、子供むけの講習会を行うことでも競技が認知されはじめ、人気になりつつあるという。

「普及活動として、Jリーグのハーフタイムにデモンストレーションをすることもありますよ。あまり屋外ではやらないスポーツですが、そういうところで、見て知ってほしいなと思います。珍しいところでは、クラブのフロアにネットを張って、DJが音楽をかけながらやることもあります。」

−危なくないですか?

「ボールがあちこちに飛んでいきましたね(笑)。でも、日本代表の選手が10人くらい出て、ワンデートーナメントをして、すごく盛り上がります。」

至近距離では迫力がすごいだろう。高いジャンプはフォトジェニックな要素もあり、最近では携帯のテレビCMにも使用されるなど、ほんのワンシーンでも力強い印象を残す。もし試合を間近で見たら、身体能力の高さと技、試合の展開の早さ、激しさに、一瞬も目を離せないほど魅せられる。

「大学卒業後は、企業チームでガッツリやっていたのですが、今は週1〜2回の練習です。それでも、今までの経験もありますし、体が動くように調整していますよ。大会に出たいですからね。」


−これからの目標は、もちろん、上を目指すんですよね?

「そうですね、もちろん目標は高く持ちます。2014年、全日本オープン選手権で優勝したんですよ。でも一回だけだと、『まぐれ』って思うじゃないですか。だからもう一度優勝して、実力だっていうことを、自分に証明したいです。」

いつの日か、セパタクローが日本に広く普及し、彼の名前をメディアで耳にすることがあるのかもしれない。「趣味」の域はとっくに超え、セパタクローは堀江さんの人生の一部となって、仕事や考え方の軸になっている。新しいものに自分のやり方でのめり込んで、目標を定め、セパタクローの普及と上達に向けて、真摯に取り組み続けていくのだろう。





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